海外投資の為替リスクについて
海外投資する上で大きな壁となるのが、為替レートの変動です。海外へ投資する場合、将来円安になれば利益は大きくなり、円高になれば利益は目減りすることになります。我々が海外の株や債券などに投資する場合、為替変動の影響を被ることは避けられないのです。
では将来の日本は、円高になるのでしょうか?それとも円安でしょうか?
答えは残念ながら「正確には分からない」になります。例えば株式投資の場合は、過去200年のデータからは長期的には必ず上昇してきましたので、これから先もおそらく上昇していく可能性が極めて高いと言えるでしょう。会社が増益し続ければ株価も同様に上昇し続けるはずですから、資本主義経済が拡大し続ける限り、株式市場も拡大する訳です。
しかし、外国為替レートが変動相場制になったのは1971年ですから、40年足らずしか経っていません。また、為替は株式市場と違い、一方の価値が上昇すれば、一方は下落するという逆相関の関係になります。例えば円安ドル高では、ドルの価値が上昇する一方、円の価値は下落することになります。
つまり株式市場は、ある会社の株式価値が上昇すれば(他の会社の動向に関係なく)必ず株価も上昇するという「絶対評価」です。しかし為替市場は、例え日本円の価値が上昇しても、それ以上に米ドルの価値が上昇すれば円は安くなるという「相対評価」なのです。
また為替レートの評価は、長期的にはその国の国力(貿易収支や投資収支)に比例していくはずですが、短期的には金利差や投機マネーの動向に左右されるなど、変動の要因は様々です。だから将来円高になるのか?円安になるのか?というのは、簡単にはわからないのです。
筆者個人の予測では、日本の三重苦(人口減少・無資源・借金増大)から、長期的には円安になると考えており、だから海外投資は有利だとの意見です。一方で「日本の国力低下=円安ではない!」と真っ向否定している経済学者も少なくありません。
為替リスクを含めても、やはり海外投資すべき!
しかし、実はあなたが将来円高か?円安か?について確信が持てなくとも、海外投資する意義は大きいです。例えば『賢者の海外投資術
』著者の橘玲氏は「人的資本(給与所得)が全て日本円で受け取る以上、運用は全て外貨建て資産にするのが経済学的に正しい戦略だ」と述べています。
同様に、モーニングスター代表の朝倉智也氏も、著書「30代からはじめる投資信託選びでいちばん知りたいこと
」で人的資本の考え方を説き、国内資産を一切取り入れないポートフォリオを推奨しています。一件奇抜に見える「外貨建て100%運用」は、むしろ理に適っているとして、推奨している専門家も少なくないのです。
また、一部例外的に『確実に円安になる』であろう通貨も存在します。為替介入によって意図的に通貨安を作り出している人民元が典型例です。将来のドル安を考えると徐々に介入を減らすしかない=元高になる、という図式が長期的には成り立ちます。
中国の人民元は為替介入で安く抑えられており、将来は元高円安に進むだろうと考えられていました。しかし2010年代に入り、中国はシャドーバンキング問題や、外貨準備やGDPを偽装していたことが発覚しました。習近平の親族を始め、中国共産党の幹部親族が次々に資金を海外に逃避させているとも報じられており、中国経済は一歩間違えば崩壊寸前の窮地に陥っています。このため、人民元は大暴落する、あるいは中国政府が人民元の切り下げにうって出る可能性も出ています。
従って、人民元を含め、将来100%確実に円安が進む通貨など存在しません。だからといって、全て円建て資産だけで運用することも非合理的です。
当コーナーでは、為替変動のメカニズムなどを詳しく説明していくと共に、為替リスクを背負って海外投資する必要があるのか?その正当性を分析していきます。
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