長期投資が有効な理由
海外投資で高い利益を得たいなら、長期投資を前提に考えるべきです。ここでは長期投資の有効性を、短期売買が如何に不利かという点から、逆説的に考えてみます。
巷の書籍では、デイトレードに代表される短期売買が圧倒的に多いですが、個人投資家がプロ(機関投資家やヘッジファンド)に対して、短期売買で勝つのは不可能に近いことです。それを証明する話として、大手金融機関の短期売買に関するニュースがあります。
米投資銀行ゴールドマン・サックス・グループの2010年1−3月(第1四半期)は、1日のトレーディング収支がマイナスの日が全くなかった。
すべての営業日で、1日当たりのトレーディング収支が2500万ドル(約23億2800万円)以上のプラスだった。ゴールドマンが米証券取引委員会への届け出で明らかにした。
【Bloomberg等、複数のニュースサイトより】
米バンク・オブ・アメリカは、2011年第1・四半期の全営業日でトレーディング益を計上して、その額はほぼ毎日2500万ドル以上だったことが明らかになった。米証券取引委員会に提出した報告書によると、第1四半期の98%の営業日で、少なくとも2500万ドルのトレーディング収入を計上した。同行がトレーディング損失を1日も出さなかったのは、過去5四半期で3回目。【ロイター等、複数のニュースサイトより】
これらの大手金融機関は、莫大な設備投資を行い、通常の投資家より高速に売買注文を出せるシステムを保有しています。時間にしてゼロコンマ数秒ということですが、4半期(約60営業日)で無敗という成績を見れば、如何に有利なシステムなのかは明らかです。
このような金融業界の猛者達に、一介の個人投資家が太刀打ちできるでしょうか? デイトレードはゼロサムゲーム(勝者と同額だけ敗者も生まれる)なので、大もうけした大手金融機関の裏には、彼らの「肥やし」になったトレーダーが居るという事です。個人投資家の大半が、デイトレードで敗者となることは自明の理です。
回転率が高いファンドほど成績が悪化する
短期売買が不利である、もう一つの理由も挙げておきます。「投資の科学(マイケル・J・モーブッシン:日経PB社)」という書籍に、アメリカの投資信託について、保有ポートフォリオの回転率と利回りの関係を示すデータが載っています。この統計によると、回転率の高い(売買率が高い)ファンドほど、利回りは劣る結果が出ています。各年を縦に比較すれば一目瞭然で、最も利回りが高いのは回転率が一番低い0〜20%のグループで、逆に最も成績が悪いのは回転率が100%超のグループです。
回転率\期間 |
1年 |
3年 |
5年 |
10年 |
0〜20% |
27.0% |
23.9% |
17.2% |
12.9% |
20〜50% |
23.1% |
21.9% |
16.6% |
12.5% |
50〜100% |
21.8% |
21.8% |
17.0% |
12.6% |
100%超 |
17.6% |
19.8% |
15.0% |
11.3% |
※表の見方:回転率とは、ファンドの保有銘柄が一年で入れ替わった比率。50%なら半分の銘柄が1回入れ替わる、200%なら全銘柄が2回入れ替わるという意味。表内の数値は、年率換算した利回り(数値が高いほど好成績)。データは1997年6/30までの期間。
このデータを見れば、頻繁に売買を行う=ポートフォリオの入れ替えが激しいファンドほど、成績が悪いことは明らかです。売買が多いとパフォーマンスが下がる理由は、売買手数料が増えることと、売却益には税金がかかる事です。バイ&ホールド(保有し続ける)投資なら、利益は「含み益」なので税金を先送りでき、利回りを劣化させません。
別の見方をすれば、回転率が高いファンドは、わざわざ複利を単利に直して利回りを劣化させていることになります。⇒複利投資の効果は絶大
これらのデータに習えば、個人投資家も頻繁に売買するほど、成績は悪化する可能性が極めて高い事になります。投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの『私の好きな保有期間は「永久」である』という名言は、実に理に適った方法論なのです。
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