ドル円為替レートの一日の変動幅データ(最大値・平均値など)
日本の投資家にとって、最も重要な為替レートは、何と言っても米ドル=円です。為替FXやアメリカ株投資だけに限らず、例えば人民元・香港ドルやインドルピーなどは、アメリカドルとペッグしていますので、為替レートの動きはドル円の動きと連動します。また外国株に限らず、日本株の多くが為替レートの変動の影響を大きく受けます。
ドル円の値動きを知っておく事は、日本の全ての投資家に必須の情報だと考えられます。そこで当ページでは、ドル円の為替レートは一日でどの程度変動するのか?平均値や最大値等を割り出してみました。データが入手可能な、2000年以降のドル円為替レートの4本値データ(※注1)を元に、変動の原因となった事件と合わせて分析してみます。
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右図のように、ドル円の為替レートの変動幅は平均で0.992円でした。上のグラフを見ても、平均的には小さな動きな事は明らかですが、およそ95%の日が2円未満の値動きに過ぎません。
2000年以降でドル円レートが最大に変動した一日は、2008年10月24日です。9月にリーマン破綻・AIG国有化・米下院ショックという、3連コンボの巨大危機で金融市場が不安定になっていた時期です。10月に入っても金融不安は収まらず、20〜24日の1週間で、NYダウ平均株価が886ドルの暴落を起こしました。金融不安が極限にまで達した事で、円キャリートレードの解消が加速し、24日のドル円レートは一時、98円台から90円台まで7円以上の円高が進みました。
付け加えると、この日は投資家の心理を表すVIX指数が、史上最高値の89.53を付けた日でもあります。更に言うと、変動幅のトップ5のうち、2008年10月が3つも占有しており、まさに金融市場に残る、歴史的大暴落の1ヶ月だった事が分かります。
2番目に変動した日は、2010年5月6日の5.95円です。この日、アメリカ株式市場では、NYダウ構成銘柄の一つでもあるP&G社の株価が、62ドル台から39ドル台にまで大暴落したことを機に、株式市場が大混乱。NYダウ平均株価が一時、998ドル安という史上最大の下げ幅を記録しました。原因は、米シティバンクの投資部門が、P&G株を誤発注した事でした。そしてこの時もやはり、円キャリートレードの解消と思われる動きがきっかけで、急激な円高が起きました。 |
ドル円の為替レート変動データ |
期間2000年1月初頭〜2013年1月末 |
総データ日数 |
3413日 |
平均変動幅 |
0.992円/日 |
変動幅1円未満 |
2066日(60.5%) |
変動幅1〜2円 |
1168日(34.2%) |
変動幅2円以上 |
148日(4.3%) |
変動幅3円以上 |
31日(0.9%) |
変動幅が大きかった日トップ10 |
日付 |
終値 |
高値 |
安値 |
値幅 |
2008年10月24日 |
94.48 |
98.08 |
90.94 |
7.14 |
2010年5月6日 |
90 |
93.98 |
88.03 |
5.95 |
2008年10月28日 |
97.62 |
98.4 |
92.48 |
5.92 |
2008年10月6日 |
100.65 |
105.13 |
100.24 |
4.89 |
2007年8月16日 |
113.11 |
116.74 |
112.01 |
4.73 |
2002年3月7日 |
126.9 |
130.9 |
126.32 |
4.58 |
2000年3月31日 |
102.28 |
106.05 |
101.99 |
4.06 |
2011年10月31日 |
78.15 |
79.51 |
75.55 |
3.96 |
2000年3月1日 |
107.09 |
110.3 |
106.48 |
3.82 |
2008年11月13日 |
97.64 |
98.27 |
94.53 |
3.74 |
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1998年には約2日で20円以上の円高が進んだ事もある!
トップ10には入りませんが、2001年9月11日の同時多発テロ(3.56円)や、2011年の東日本大震災直後の3月17日(3.49円)など、大きな事件が起きた際は、ドル円レートも円高方向へ大きく変動しています。
しかし2000年以前には、更に大きな変動を起こした日もありました。ドル売り協調介入=プラザ合意発表の翌日(1985年9月23日)には、1日で約20円の円高が起きました。1998年10月6〜8日に掛けて、ドル円レートは134円台から111.65円まで、22円超の急激な円高が起こりました。1998年8月にはロシアがデフォルト、9月には世界最大のヘッジファンド=LTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)の破綻など、金融不安が起きていました。8月に1ドル=146円台だった為替レートは、10月頭には135円前後まで円高が進み、そして6日から一気に崩壊しました。
このように、ドル円の為替レートが大きく変動する日は、必ず何か大きな事件が起きた時で、しかも全て円高方向へと急変動しています。円安方向へ1日で3円も4円も動く確率はほぼ無く、必ず円高方向へです。日米の投資家が、円キャリートレード(金利の安い円で金を借りて投資する)を行っているのが、何かの事件をきっかけに、一気にリスク回避〜円を買い戻す動きへと移る事が、その理由です。
一つ注意したいのは、この1998年の金融危機と、2008年の金融危機では、大きな事件が発生した直後ではなく、暫く経ってから最大の崩壊(円高)が起きていることです。つまり、円キャリートレードを行っている投資家が、危機が起きた直後も、暫くはポジションを保とうとする性質が読み取れます。そして、多くの投資家が暴落に絶えきれなくなり、臨界点を迎えた時に、一気に相場が崩壊して、急激な円高が起きる理由となるのです。一旦危機が落ち着いたように見えても、その後でより大きな円高が来る確率が高い事を念頭において、投資に望みたいものです。
※注1:厳密には4本値データではなく3本値。為替市場は株式市場と異なり、世界中で取引されている〜つまり24時間開かれており、開始値=終値である為。なお、データは米国時間基準で区切ったものです。
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