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アベノミクスで国債価格は暴落するのか?

2013年に誕生した、安倍晋三総理&黒田東彦日銀総裁のタッグは、2%のインフレ目標を掲げ、デフレ脱却に全力を尽くすと宣言しました(⇒日銀・黒田新総裁の金融緩和策の内容)。 民主党&白川日銀時代とは正反対のインフレ政策は「アベノミクス」と呼ばれ、早くも2013年の流行語大賞を決定するかの勢いです。その証拠に、2013年初頭から株高&円安が進行しており、マーケットは明確にアベノミクス歓迎を示しています。

ただ一つ問題なのは、国債市場です。日銀は長期国債の買い入れを倍増する意向を示しており、これは短期的には長期金利の低下に繋がっています。しかし、長期的な視点で見ると、金利上昇のリスクがあります。2%のインフレ目標を目指すわけですから、将来的には物価上昇に伴って、長期金利も上昇する可能性が非常に高いです。世界各国と比べても、現在の日本の長期金利(1%未満)の水準は低すぎ、正常な先進国経済なら2〜3%程度が最低ラインです。

では、このままアベノミクスが遂行されていけば、長期金利が急騰=国債価格は暴落するのでしょうか?

当サイトでは、2%のインフレ目標が続く当面の間は、国債が暴落する確率は極めて低いと考えます。その理由は、国債暴落のトリガーとなるのは、国債を大量に抱えている日本の銀行〜特に3大メガバンクだからです。

右図は、2012年末時点での国債の保有主体別割合です(出典:日銀統計局)。単体では郵貯や簡保の割合が大きいのですが、彼らはその制約上、国債を売ることは不可能です(※注1)。よって、郵貯・簡保以外の最大の保有主体となると、民間の銀行になります。つまり、長期金利が高騰する最大の原因は、銀行が国債を投げ売った場合に限られるのです。

日本の3大メガバンク(UFJ・みずほ・三井住友)は、預金に対して30%程度の割合を、国債で運用しています。そして、デュレーションは概ね6年程度とされています。現在、日本のインフレ率はゼロ近辺ですから、アベノミクスの目論見通りに2%の物価上昇が起きれば、長期金利も概ね2%上昇すると予想されます。すると、メガバンクの保有する国債は『2%×6年=12%』程度の損失が発生します。メガバンクの資産の30%が国債で、それが12%目減りすると言うことは、総資産が3.6%喪失することになります。

この3.6%のマイナスというのは、銀行経営にとっては何とか絶えられるレベルの損失です。ちなみに、スペインやイタリアのように長期金利が7%程度まで上昇すれば、国債価格は42%暴落⇒銀行の総資産が12.6%喪失することになります。これだけ資産が減ってしまうと、銀行の経営危機であり、公的資金注入など金融不安が起きるでしょう。

2%のインフレ目標だと、銀行の経営危機は起きないが、財政破綻を避けるのは困難

従って、2%のインフレ目標では、日本のメガバンクが経営危機に陥る可能性は低いです。よって、銀行が国債を投げ売りに出る確率は低いですから、国債の暴落は起きないというロジックが成り立つのです。インフレ連動債に切り替えていくなど、銀行側も対策するはずですからね。

但し、長期的な視点からは、この限りではありません。過去15年の日本の債務増加ペースは、およそ年率4.5%です(※注2)。しかし、この間のこの間の名目GDP成長率は−0.74%ですから、債務対GDP比率は毎年5.2%以上も拡張してきています。ですから、日本が財政破綻を避ける(=債務対GDP比率を下げる)為には、名目GDPが最低5%以上の成長が必要です。先進国の実質GDPの成長は、通常1〜2%程度ですから、日本には3〜4%のインフレが必要なのです(※注3)。

つまり、アベノミクス=2%のインフレ目標というのは、日本の財政破綻を避けるには不十分な数値です。従って、2%のインフレを続けたとしても、長期的には対GDP比200%の債務比率は下がらない(更に増える可能性が高い)ので、財政破綻懸念から国債が暴落するリスクは、顕在したままなのです。

 

※注1:郵貯銀行は、民間への融資業務が法律で禁じられているので、必然的に国債で運用せざるを得ない。
※注2;日本の名目GDPがピークだったのは1997年。以降、実質GDPはわずかに成長していますが、デフレがそれを帳消しにしている。
※注3;インフレターゲットの提唱者=ポール・クルーグマンも、日本は4%のインフレターゲットを15年続けるべきだと主張している。

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