海外投資データバンク 海外投資検定 
海外投資の基本 高度な投資戦略 為替リスク 債券投資 国と企業の情報 株価指数&ETF データ&用語集 確定拠出年金
HOME > 債券投資 > 黒田日銀の金融緩和策の内容

日銀=黒田新総裁の金融緩和策(インフレ目標)の内容まとめ

2013年4月4日、安倍晋三総理の下で誕生した、日銀の黒田東彦・新総裁が、デフレ脱却に向けた新たな金融緩和策を発表しました。前任の白川方明総裁とは、まるで次元の違う内容であったことから、金融マーケットは大きな反応を示しました。以下、黒田日銀総裁の打ち出した、金融緩和策の内容をまとめてみました。

1. 政府と合意した2%のインフレ目標を2年で達成することを目指し、長期国債やETFの保有額を倍増する  
2. 金融調節の目標を、短期金利(政策金利)から資金供給量(マネタリーベース)に切り替える  
3. マネタリーベースを2年で2倍にする。2012年末のマネタリーベースは138兆円だが、これを14年末には270兆円まで拡大する  
4. 長期国債の保有額を2年で2倍超にする。2012年末の保有残高89兆円から190兆円へと増額させる  
5. 国債の買い入れ対象を広げる。40年債を含む全ての国債を対象とし、償還までの平均残存期間を現在の3年弱から約7年に延長する。  
6. 上記目標の達成の為、国債の保有額を紙幣発行高以内とする銀行券ルールを一時停止する※注1  

この日銀の発表を受け、金融マーケットではデフレ脱却の期待が高まり、大きく反応しました。まず、発表直後の4月4日の夜、ドル円の為替レートは92円台から95円台半ばまで、一気に円安が進みました。その後、もみ合いながらもトレンドは続き、5日の終値は97円52銭まで円安になりました。日銀がマネタリーベースを増やすことは、通貨の量が増える、つまり円の価値が下落することを意味しますので、為替が円安に振れるのは当然の反応です。

株式市場では、4月5日の日経平均株価こそ199円高でしたが、東証一部の売買代金は4兆8600億円にのぼりました。東証の売買代金は、2兆円を超えると活況と言われ、昨年の民主党&白川総裁時代の平均が1兆円前後であったことと比べれば、すさまじい売買代金でした。また、東証一部の出来高(売買高)は60億株を超えて、史上最高となりました(※注2)。

そして債券市場も大きく反応し、長期金利は5日の午前中に、史上最高値であった0.430%を抜き、0.315%まで上昇しました。しかし長期金利は、午後には0.6%台にまで急落するなど、乱高下な相場に終始しました。

日銀の国債買取規模は米国のQE2以上!デフレ脱却の可能性は高い

この黒田日銀の緩和内容で、最も重要な点は、長期国債の買い入れを増やすことです。インフレ目標の達成には、長期金利の買い入れを調整するのが最も有効な政策であることは、世界中の中央銀行が行っている事からも明らかです。

日銀の長期国債保有額は、予定通り行けば2015年までに100兆円増加することになります。アメリカのFRBがQE2と呼ばれる緩和策で、国債の買い入れを増額した金額は6000億ドル(約50兆円)です。アメリカの経済規模は日本の2.5〜3倍ありますから、日銀が100兆円国債を買い増すというのは、FRBが1.5〜2兆ドル国債を買うレベルに相当します。今回の日銀の国債買い入れは、極めて大きな金融緩和策だといえます(※注3)。

そのため、短期的には国債の買い手が大幅に増えることから、安心感が広がり、債券に買いが集まる=長期金利は下落(低位安定)する可能性があります。しかし、経済がデフレからインフレに転換していくことで、長期的に見れば長期金利は上昇する可能性が高いです。長期金利が1%を下回るというのは、世界的にも異例の事態です(※注4)。

日本がデフレから脱却し、財政破綻を避ける為には、日銀が国債の買い入れを増やしていくことは正解です。国の中央銀行が、政府の財政ファイナンスを『適度に』手助けする事は、世界中の全ての国が行っており、何ら問題はありません。

但し、同時に経済を成長させなければ、物価が上がるのに国民の所得が増えないという、最悪の事態(スタグフレーション)に陥りかねません。日銀が国債を買い入れることで財源が生まれる間に、政府は新たな経済成長戦略を打ち出し、税収も国民の所得も増えるようにする必要があります。日本のデフレ脱却&財政再建には、黒田日銀のインフレ目標=国債買い入れ増加と共に、安倍総理の経済政策も同じくらいに大切だといえます。

 

※注1:この銀行券ルールは日銀か勝手に決めたもので、法的拘束力は何もないので、デフレの元凶だと問題視されていました。
※注2;過去の東証の出来高の最高は、東日本大震災直後の2011年3月15日の57.7億株でした。
※注3;但し、日銀は2008年の金融危機以降、FRBと違ってほとんど金融緩和を行っていないので、単純比較はできません。
※注4;長期金利が1%を割り込んだ事がある国は、日本とスイスだけです⇒スイスの長期金利グラフ

海外投資のトラブルと対策 低PER投資の有効性 リバランスは必要ない! ドル円の一日の変動幅 ブラックマンデーの原因  
国民年金基金のデメリット 上海総合指数 アメリカの長期金利 新興国債券は必要か? 

免責事項とプライバシーポリシー | 参照元と著作権について | お問い合わせ | 俺流ヘッジファンド運用報告書 
 Copyright (c) 2013. 海外投資データバンク. All Rights Reserved.