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世界の物価連動債(インフレ連動債)

債券の種類の一つに、物価連動債というものがあります。物価連動債とは、文字通り物価の変動率に連動して利益が得られる債券(国債)のことで、インフレがどれだけ進もうが、利回りが下がらない事が特長です。

世界最初の物価連動債は、1981年にイギリスで発行されました。その後、世界で徐々に広がっていき、1997年にはアメリカで、2004年には日本でも発行が始まりました。今日では大半の先進国で導入されており、G7の7カ国は全て、物価連動債を発行済みです。他にも、オーストラリアやスウェーデン、南アフリカやギリシャなどでも導入されています。

国名 発行開始年 元本保証 発行済残高
イギリス 1981年 無し 2560億ドル
カナダ 1991年 無し 300億ドル
アメリカ 1997年 あり 3610億ドル
フランス 1998年 あり 1540億ドル
イタリア 2003年 あり 810億ドル
日本 2004年 無し 410億ドル
ドイツ 2006年 - 120億ドル

表の出典;財務総合政策研究所、PIMCO。発行済残高は2007年初頭時点。

物価連動債の仕組みは、発行時に利息が決まり、以後はCPI(インフレ率)の変動に従って、元本が増減するという仕組みです。例えば、発行時100円・利息2%の物価連動債が、1年後にインフレ率が3%進んだとすれば、額面が103円になり、利息もこの103円の2%分が支払われます。また、満期時にデフレになっていた場合、発行時の額面を下回る〜つまり元本割れもありうるタイプ(イギリスや日本)と、元本保証タイプ(アメリカ)があります。

アメリカでは5年、10年、20年満期の物価連動債が発行されています。また、物価連動債を組み入れたETF『iシェアーズ・米国物価連動国債 ETF 【ティッカー:TIP】』も発行されています。この物価連動債ETFは、日本の証券会社でも購入できます。

 ・iシェアーズ米国物価連動国債ETF 【ティッカー:TIP】、信託報酬0.2%、分配金=毎月

この物価連動債ETF(TIP)の時価総額は、150億ドル(1兆5千億円)を超えています。アメリカでは安全資産として、運用ポートフォリオのコアに活用する人が多いのです。アメリカは有史以来、インフレを経済政策の一部として、計画的に進めてきた歴史があるからでしょう。1920年から2012年までの、アメリカの平均インフレ率(CPI)は2.81%でした(※注)。

このアメリカの物価連動債ETFは、日本の投資家にとっても、有力な投資対象だと言えます。米国の株式や債券に投資する場合、円高による為替差損リスクが常につきまといます。しかし、物価連動債ETFは(米ドル建てでの)インフレリスクがありません。そして相対的購買力平価に習えば、日米のインフレ率の差分だけ、円高が進むことになります。もし円高が進んでいれば、その分アメリカでインフレが進行しているはずですから、物価連動債ETFの価格が上昇して、円高を相殺できるはずです。

当サイトでは、絶対的購買力平価説は無意味、相対的購買力平価説もキャリートレードの拡大で薄れていると結論付けています。よって、完全に円高リスクを回避できるとは思えませんが、通常の債券ETFよりは安全性が高いのは事実です。

物価連動債が発行される理由

インフレでも実質的な債券価格が目減りしない事は、安全運用を考える投資家にとっては、非常に魅力的です。では何故、政府は物価連動債を発行するのでしょうか?

その理由は、債券利息にプレミアムが不要だからです。通常の国債だと、投資家は「将来インフレで元本が目減りする」リスクを背負いますから、それ相応のリターンを求めます。一方、物価連動債だとインフレリスクはゼロですから、通常の国債より低めの利息でも、投資家は十分納得します。つまり、国家財政を運営する政府にとっては、より低い利息で国債を発行できるメリットがあるのです。

日本では今後、財政破綻を避けるためには、インフレ率が高まっていく事が必死です。ゆえに財務省も、個人向け国債のようなインチキ商品を売りつけるなら、物価連動債を個人向けに発行すべきでしょう。最初の表を見ても分かるように、日本の物価連動債の発行額は極めて小さいです。日本はフランスやイタリアの2倍以上のGDP規模にも関わらず、発行額が半分というのは如何にも少なすぎます。物価連動債をもっと大量に発行する事が、政府にとっても、国民にとっても、共に有益になるはずです。

※注米国のCPI(エクセルデータ)。ソースはアメリカ労働省統計局発表のCPI値より集計。




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