スペインの長期金利(10年物国債の利回り)推移グラフ
スペインの長期金利推移グラフです。同国は、2010年のユーロ危機で、国債市場が危険状態とされるPIGS(ポルトガル・イタリア・ギリシャ・スペイン)の一つに挙げられます。2012年夏には、スペインの長期金利(10年債利回り)は7%以上にまで上昇し、非常に高い水準にあります。もしギリシャ国債がデフォルト(債務不履行)を起こせば、スペイン国債も連鎖デフォルトに陥る可能性が高いです。
スペインはユーロ危機の中でも、ギリシャの次に悪影響が広がっている国です。2012年10月時点のスペインの失業率は約25%と、先進国ではギリシャと並んで最悪の水準です(※注1)。特に若年層(15〜24歳)の失業率は約53%、何と半数以上が失業者という惨状です。
また、不動産バブルの崩壊も、深刻な影響を及ぼしています。スペインでは2000年代に、10年間で不動産価格が約3倍に急騰し、しかも住宅着工件数がイギリス・フランス・ドイツの三カ国の合計を上回る(※注2)という、凄まじいバブル状態でした。そしてアメリカのサブプライムローンの崩壊で、スペインの住宅市場も崩壊し、金融機関は大量の不良債権を抱える事になりました。 金融機関が経営難になると、企業への融資が抑制されるため、景気には極めて悪い影響が出ます。
そして、スペインの財政再建の道のりは、お世辞にも順調とは言えません。地方自治体の資金繰り救済のために、国営の宝くじ会社に社債を発行させるという「珍案」まで実行されたほどです。
ユーロ安による観光収入の増加はプラス要因
そんなスペイン経済の唯一の救いは、観光産業が強い事です。スペインの旅行収支は、アメリカに次いで世界で二番目のプラス(434億ドル。2008年)です。同年のGDPが1.6兆ドルですから、観光への依存度が非常に高い事を表しています。従って、経済危機に伴うユーロ安は、北米やアジアなどからの観光客の増加に繋がり、税収の増加要因となるでしょう。
偶然にも、ギリシャやイタリアなど他のPIGS諸国も、観光大国であり、ユーロ安は経済にプラスに働きます。更に言えば、PIGS諸国がユーロを脱退して独自通貨に戻れば、観光収入がより増えることになります。
ユーロ危機をソフトランディングさせるには、PIGS諸国を独自通貨に戻させると共に、それらの国の政府債務を「ユーロ圏共同債」に借り変えさせる事、この二つを同時に行えば、国債のデフォルトを避けられるはずです。しかし、ドイツやフランスの負担が増えることや、PIGS諸国が(短期的には)高いインフレに襲われるなどの副作用もあり、この政策はそう簡単に実行には移されないでしょう。 ※注1:ヨーロッパ諸国は、日本よりも労働者の解雇規制が遙かに緩いので、数値だけで一概に比較できる訳では無い。
※注2:スペインの人口は約4600万人だが、 イギリス・フランス・ドイツの三カ国合計は約2億1千万人である。
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