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米ドルの価値低下=円高とは限らない!

書店の経済書コーナーには、様々な「トンデモ本」が並んでいます。特に為替関連の本は、分かっている人からすれば呆れてしまうような、主題から明らに誤っている本が沢山あります。典型的なのが、ドル円の為替レートが50円だとか60円だとかまで円高が進んでいく、と書かれたトンデモ本です。

円高本に共通する理論は「アメリカドルの価値が低下していくので、将来は円高になる!」という考えです。確かにアメリカ合衆国は、第二次大戦以前より、一貫してドルの価値を減価させていく政策を取っています。これは、ドル紙幣を新たに刷って、政府の借金(国債)の返済に当てることが目的です。ですからアメリカは一部の金融恐慌時を除き、一貫して通貨価値の下落(=インフレ)が続いています(※注)。

トンデモ経済本では、米ドルの価値が下落していくのだから、日本円に対しては円高になっていくと解説しています。相対的購買力平価説に習えば、米国の通貨価値が下落すれば、日本円の価値は相対的に見て高くなる=円高だという訳です。

しかし、この理論には大きな詐称が含まれています。米ドルの価値が下落することと、ドル円の為替レートが円高になることは、イコールで結ばれるとは限らないからです。

購買力平価説でも、ある条件を満たさないと「円高になる」とは言えないのです。米ドルの価値が下落していく時に、もう一方の日本円の価値が変わらない(又は上がっていく)のであれば、確かに円高になります。しかし米国と同様に、日本でもインフレ(通貨価値の下落)が起こっているのであれば、円高になるとは限りません。アメリカがインフレでも、日本のインフレ率の方が高ければ、逆に円安になっていくのです。

仮に現在、同じメーカーの缶コーラ1本が、アメリカで1ドル、日本では100円だとすれば、【コーラ1本=1ドル=100円】という式が成り立つので、購買力平価説での適正為替レートは1ドル=100円となります(図上部)。

ここでもし、アメリカで物価が2倍になるインフレが起きたとすれば、缶コーラ1本の値段は2ドルに値上がりします(図左下)。この時、日本ではインフレがゼロだとすれば、【コーラ1本=2ドル=100円】という関係が成り立つので、購買力平価説に習えば1ドル=50円の円高になるという訳です。

しかし同時に、日本でも物価が2倍になるインフレが起きたとすれば、【コーラ1本=2ドル=200円】となり、1ドル=100円が適正レートとなります(図右下)。アメリカでインフレが起きても、日本でも同様のインフレが起きれば、両国とも通貨の価値自体は下がっていますが、為替レートは変わらないのです。

将来の日本ではインフレが起きることはほぼ確実

アメリカは、今後も(借金の負担を減らす為に)意図的にインフレを起こし続けるでしょう。しかし、米ドルの通貨価値が減価しても、それ以上に日本円の通貨価値が減価すれば、為替レートは円安になっていくのです。日本政府の借金(対GDP比200%)とその内訳(95%が円建て)を考えれば、近い将来、日本円の価値が下落していく(インフレになる)確率は、極めて高いはずです。

この膨大な借金で政府がパンクしない為には、アメリカのように計画的にインフレを起こして、借金の負担を減らしていくしか方法が無いからです(歳出削減や増税で賄えるレベルを超えている)。一方で、今後も政府や日銀が何の対策もしないでいれば、ある日突然、日本国債の暴落をきっかけに、猛烈なインフレが起きる危険性も否定出来ません。

つまり、どう転んでも近い将来、日本経済はインフレに見舞われることは、まず間違いないのです。そして、アメリカ経済よりも日本経済の方が、問題がはるかに深刻(少子高齢化・無資源・膨大な借金)なことを考えれば、アメリカ以上のインフレ率になる=円安に進む可能性が極めて高いと、筆者は考えています。

当サイトでも何度も書いているように、経済本の著者は、自分が有利になるようにあえて嘘を付く「ポジショントーク」を頻繁に行います。少なくとも、トンデモ経済本に書かれているような、一方的に円高が進んで1ドル50円だの60円だのになる可能性はほぼゼロだと、筆者が断言しておきます。

 

※注 程度の違いこそあれ、日本以外の全ての国(ヨーロッパも中国もジンバブエも)が意図的にインフレを起こして、政府の負担を長期的に軽減する政策を行っています。それが国家財政の常識であり、日本だけが唯一、インフレ政策を否定している大馬鹿者なのです。


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