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為替介入は無意味〜円安誘導できない

2011年3月17日、それまでドル=円為替レートの史上最高値(79円75銭)を大幅に上回る76円25銭まで円高が進みました。そして18日には、G7で円売り協調介入が行われる合意がなされ、80円台にまで戻しました。しかし6月に入って再び80円割れを記録するなど、円高圧力は衰えてはいません。

なぜ為替介入が行われたのに、円高が止まらないのでしょうか?結論から先に言うと、為替介入で円高を阻止することは、もはや不可能な時代になっているのです。

国際決済銀行の発表によると、2007〜10年の一日平均の為替取引高は約4兆ドル、ドル円はその内の14%とあります。つまりドル円の為替取引は、一日で約5600億ドル(約50兆円)にものぼるのです。3月18日の介入(日銀分)は約6000億円程度でしたので、実際の影響力は1%程度に過ぎないのです。

一時的に円安が進んだのは、あくまで「為替介入が行われる」と分かったことにより、投機筋の円買いトレードが売り戻された為です。つまり、限りなく「口先介入」としての効果であって、実際に日銀が行った程度の円売りでは、ほぼ焼け石に水なのです。そして、介入後も日銀が金融緩和をしない(マネタリーベース※1を増やさない)という相変わらずの行動が確認された為、投機筋が円買いを再開し出したから、再び80円割れの円高が起きてきたのです。

もし本当に、為替介入で持続的な円安へと導きたいのであれば、中国がそうしているように、圧倒的な量の自国通貨売りと、通貨の完全管理(人民元の海外持ち出し禁止など)、そして他国からの非難に屈しない断固たる態度を示さねばなりません。日銀は投機筋から「どうせ今後も何もしない」と舐められており、為替介入も「所詮はポーズだけだ」と見抜かれているからこそ、円高圧力が一向に消えないのです。

だからといって、自由主義経済である日本が、中国のように恒常的に為替操作を行うことは、他の先進国が許さないでしょう。実際の効力も、そして大義的にも、為替介入で円高阻止を行うことは不可能な時代になっているのです。

円安誘導はお金を刷るだけで簡単に行える

しかし、他国から文句を言われず、しかも効力絶大である円安政策があります。その方法は実に単純で、日銀の非伝統的金融緩和〜つまり紙幣を刷って国債を買い取ることです。

金融危機後の円高の要因は、日銀が何もしないのに対して、アメリカのFRBが紙幣を刷りまくったからです。具体的には、FRBは二度に渡る金融緩和策で、初回のQE1では1.7兆ドル(170兆円)、QE2では6000億ドル(60兆円)もの紙幣を刷り、米国債を買い取っています(⇒アメリカFRBのQE1・QE2の内容)。日本のマネタリーベースがほとんど増えていないのに、アメリカのマネタリーベースが2兆ドル以上も増えたのですから、当然ながらドルの相対的な通貨価値は下がります。両国は共にゼロ金利〜つまり金利差が無いので、片方の通貨量が増えれば、その国の為替レートが安くなるのは必然ですから(相対的購買力平価※2)。

アメリカがマネタリーベースを激増させているのであれば、日本もそれに見合うだけ増やさなければ、為替レートは円高になる一方なのです。逆に言うと、日銀が金を刷りまくれば、それだけで為替レートは簡単に円安誘導できるのです。

FRBがそうしたように、日銀も新規に金を刷って、国債を買い取るべきなのです。そうすれば、為替介入するよりも確実に円安になりますし、日本政府の財政問題も解消できます。勿論、現在の日本ではハイパーインフレなど絶対に起きません。日本ではデフレギャップが毎年2〜30兆円もあるので、それだけお金を刷ってもインフレ率はゼロになるだけに過ぎません。

※1:中央銀行が市中へ供給するお金の量。原理的には、これを増やせばインフレ&通貨安になる。
※2: 購買力平価は為替変動の一要因に過ぎません。しかし、この時点で日米は共にゼロ金利なので、金利差によるキャリートレードが発生しないので、相対的購買力平価だけが影響を及ぼします。




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