タイ・バーツの為替レート推移(対円&対ドル)
タイの通貨=バーツと日本円との為替レート推移です。期間は1990年以降2013年末までの月次平均値で、チャートの見方は「1バーツ=○○円」となります。時系列データはページ下部にエクセルファイルで置いています。
タイは成長著しいASEANの一角を占める国ですが、政治・経済共に事件が多い国でもあります。2011年には大洪水によりバンコク始め主要都市が水没し、推定450億ドルという巨大損害を出しています。2006年にはクーデターによる軍事政権が成立するも、2013年頃から民主化デモが激化し、政治の空白化が起きています。
円との為替レートの変動にも、大洪水や政治の混乱も影響していますが、タイバーツで最も大きな事件といえば、1997年のアジア通貨危機です。チャートで1バーツ=5円近いレートから2.5円位まで、大きく円高に触れている部分がそれです。
アジア通貨危機とタイバーツ
アジア通貨危機以前まで、タイ・バーツはアメリカドルとのペッグ制(固定相場制)を取っていました。しかし1997年頃には、バーツのレートが実体経済よりも過大評価になっていることに、欧米のヘッジファンドが目を付けます。ヘッジファンドが為替市場で大量のバーツ売り(空売り)を仕掛け、タイの中央銀行がドルペッグを維持するためにドル売り・バーツ買いの為替介入との戦いとなりました。しかしタイ中央銀行の外貨準備が底を突き、ドル売り介入が不可能になったため、7月にはドルペッグ制を放棄(※注1)し、変動相場制に移行しました(関連ページ⇒SET指数(タイ平均株価))。
これにより為替レートは、1ドル25バーツ程度だったのが、数ヶ月で1ドル50バーツまで暴落し、IMFから救済を受ける羽目に陥りました。このタイ中央銀行の敗北がきっかけとなり、インドネシアや韓国・フィリピンなども、ヘッジファンドの空売り攻撃を受ける事になり、各国の通貨が暴落した。これがアジア通貨危機の概要です。
しかしアジア通貨危機以降は、タイの為替レートは1ドル=30〜40バーツ程度で安定しています。政情不安があっても、さほど激しく変動はせず、ボックス圏での値動きですね。円との為替レートの変動も、タイの事情というよりは日本側の原因による変動です。2005年〜07年頃は円キャリートレードによる日本の円安期であり、2009〜12年は民主党&白川日銀のデフレ政策による円高期で、それがアベノミクス&黒田日銀の金融緩和(インフレ目標)導入により再び円安に振れています。
今後も円とタイバーツの為替レートは、タイ国内の情勢よりも日本側の事情の方が大きく影響していく可能性が高そうです。 ※注1:ドルペッグ放棄を決めた7/2には、一日で1ドル=24バーツから30バーツ超まで、23%も暴落した。
※付録:タイバーツ=円・ドルの為替レート時系列ファイル(エクセル。データは月次平均・高値・安値)。
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