日経平均株価とTOPIXの違い〜確定拠出年金でどちらに投資すべきか?
確定拠出年金では、日本株を対象とした投資信託(ファンド)が必ず用意されています。そして金融機関によっては、日本株ファンドは日経平均株価に連動するものと、TOPIXに連動する物の二種類が用意されているケースがあります。
どちらも日本の平均株価として、ネットや新聞などで見かけますが、一般的には日経平均株価の方が有名です。しかしいざ自分が資産運用するとなると「何が違いなのか分からない」「確定拠出年金でどちらの投資信託で運用すべきか?」と悩む人も多いようですので、解説してみます。
結論から言うと、確定拠出年金に限らず、資産運用する場合の日本株は、TOPIX連動の投資信託を選ぶべきです。これから説明するように、日経平均連動型の投資信託は分散が不十分で長期投資には適さないからです。
※以下で述べる銘柄数や各種数値などは全て、当稿執筆時点(2016年11月上旬)の数値です。
日経平均株価とTOPIXの違い |
TOPIX |
項目 |
日経平均 |
1990銘柄 |
構成銘柄数 |
225銘柄 |
東証一部に上場する全株式 |
銘柄の選定 |
日経新聞社が独断と偏見で選択 |
時価総額加重平均(浮動株調整後) |
比率の算出方法 |
みなし株価方式 |
16.51% |
上位10銘柄の比率 |
32.62% |
7.35% |
上位3銘柄の比率 |
16.94% |
◎ |
分散性 |
× |
◎ |
透明性 |
× |
プロの投資家は必ずTOPIXを参照 |
結論 |
問題だらけのポンコツ指数 |
TOPIXは正式には「東証株価指数」という名称で、東証一部に属する企業の「全て」が対象になっています。よってTOPIX連動投資信託の場合、約2000の企業に幅広く分散投資する事になります。そして構成比率も「時価総額加重平均」という、世界で最もスタンダードな方式で決められています。簡単に言うと、株式時価総額=経済規模の大きい企業ほど、大きなウエイトを占めることになります。
ところが日経平均株価は、全部で225銘柄しか対象になっておらず、日本経済新聞社が独断と偏見で、明確な根拠を示さず勝手に決めています。また株価の構成比率も「みなし額面による調整を行った上で除数の修正をして算出する」という、一般人には理解不能な方式で計算されています。このような訳の分からない方式で平均株価を出しているのは、世界中でも日経平均株価だけです。
構成銘柄と比率の違い〜日経平均へのユニクロの寄与度が異常!
構成銘柄の中身についても大きな違いがあります。以下はTOPIXと日経平均株価の構成比率上位10銘柄、及びその比率を比較したものです(上記と同じく2016年11月上旬時点のもの)。
日経平均株価とTOPIXの構成比率〜上位10銘柄の比較 |
|
TOPIX銘柄 |
TOPIX比率 |
日経平均銘柄 |
日経平均比率 |
1位 |
トヨタ |
3.57% |
ファーストリテイリング |
8.30% |
2位 |
三菱東京UFJグループ |
2.05% |
ソフトバンク |
4.34% |
3位 |
NTT |
1.73% |
ファナック |
4.30% |
4位 |
ソフトバンク |
1.57% |
KDDI |
3.72% |
5位 |
三井住友グループ |
1.42% |
京セラ |
2.27% |
6位 |
KDDI |
1.41% |
ダイキン工業 |
2.26% |
7位 |
ホンダ |
1.32% |
東京エレクトロン |
2.16% |
8位 |
JT |
1.17% |
信越化学工業 |
1.82% |
9位 |
みずほグループ |
1.16% |
セコム |
1.73% |
10位 |
ソニー |
1.11% |
アステラス製薬 |
1.72% |
TOPIXの方は、トヨタやホンダ、UFJ・三井住友・みずほの三大メガバンク、元国営の巨大企業であるNTTやJTなど、大人なら誰でも名前を知っている超有名企業が並んでいます。構成比率も、時価総額が最大(かつ売上高や純利益も日本最大)で、世界で1.2を争う自動車メーカーであるトヨタが筆頭なので、誰もが納得の比率ではないでしょうか。
一方の日経平均株価の構成比率上位には、マイナーな企業も多数含まれています。ファナック、東京エレクトロン、信越化学工業・・・投資家なら知っている可能性もあるでしょうが、一般人の知名度はゼロに近い企業です。
ファーストリテイリング(ユニクロ)が比率トップというのも、何か解せないですね。ユニクロが世界的企業になったのは事実ですが、トヨタ以上の存在かと言われればNOですし、株式時価総額もトヨタが20兆円あるのに対し、ユニクロは4兆円程度と5分の1の規模に過ぎません。
日経平均株価がポンコツ指数な理由
そしてユニクロ1社だけで10%近くを占めているのが、指数として最大の問題点です。225社の平均株価だという定義なのに、たった1社が指数に10%も影響力を及ぼしているのは、明らかにいびつです。しかも、最近ユニクロの株価が軟調なので、これでもマシになった方なのです。酷い時(ユニクロの株価がピーク時)には日経平均寄与率は15%超もありました。このいびつな寄与度が理由で、日経平均先物を使う投機筋から、ユニクロ株は日経平均株価を操作する目的で大量に売買されていると言います。要するに、投機筋にオモチャにされている訳です。
また株価指数としての連続性にも疑問が残ります。日経平均株価はITバブルが最高潮の2000年4/24に、一気に30もの銘柄を入れ替えを行ったことで、高値掴みによる莫大な損失を被った「事件(※注)」もありました。もし入れ替えしていなければ、現在の日経平均株価は約4000円ほど高い水準になる計算だそうですから、とんでもない損失を出した訳です。
以上のように、日経平均株価はTOPIXと比べて・・・
・分散が不十分で特定企業への偏りが強い
・投機筋のおもちゃにされている
・株価指数としての連続性が不適格
などと欠点が極めて多いポンコツ指数なのです。これらの理由により、機関投資家は必ずTOPIXの方を参照し、日経平均株価など相手にしていません。テレビや新聞がTOPIXではなく日経平均株価を言うのは、当サイトで何度も指摘してきたように、日本のメディアが極度の金融音痴で何も分かっていないからです。
確定拠出年金は自分の将来の年金を作るため、安全で透明性のある運用をすべきな事は言うまでもありません。であるなら日本株の運用は絶対に、日経平均連動の投信ではなく、TOPIXに連動する投信の方を選ぶべきです。
※注;現在の構成比率上位の銘柄のうち、京セラ、ファナック、東京エレクトロン、の3社はこの時に採用されています。
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