世界の年金資産の運用ポートフォリオ(資産配分)
日本では将来、貰える年金(国民年金&厚生年金)が大幅に目減りする懸念が高まっています。
日本の年金制度破綻の最大の原因は少子高齢化です。少子化で年金を払う人が増えず、団塊の世代など高齢者への支払いが増え続けますので、構造的なジレンマだといえるでしょう。しかし、日本の年金制度にはもう一つ、致命的な問題があります。それは、資産配分が余りにも自国の国債に偏りすぎて、利回りが見込めないことです。
現役世代が納めた年金は、そのままでは増えません(インフレになれば目減りする)から、必ず運用に回されることになります。日本の国民年金&厚生年金は「年金積立金運用独立行政法人(通称GPIF)」という政府系の団体によって運用されています。しかし、その運用が余りにも日本国債に偏っている為、利回りが全く見込めない状況なのです。
バブル崩壊後、日本は超低金利政策が続いており、日本国債の利回りは1%台という体たらくが続いています。この日本国債へ、運用資金の3分の2もの大金をつぎ込んでいるのですから、年金資産は増えるはずがありません。諸外国の年金基金の運用ポートフォリオと比較すれば、その異常っぷりがよく分かります。アメリカやヨーロッパ各国の年金基金では、株式や土地(REIT)など、より高い利回りが見込める資産へも投資していますし、日本がほとんど行っていない外貨建て資産への運用にも積極的です。(※参考資料;大人の投資入門 [PHP研究所、北村慶
著])
世界の年金基金の運用状況 (【】内は運用資産総額) |
金融機関 |
国内債券 |
外国債券 |
国内株 |
外国株 |
その他 |
国民年金&厚生年金【114兆円】
(GPIF) |
67% |
8% |
11% |
9% |
REITゼロ
現金預金5% |
国民年金基金 【2.3兆円】
(国民年金基金連合会) |
25% |
22%
(12%) |
28% |
25% |
()内は円ヘッジ外債
運用額は05年度 |
厚生年金基金 【25.7兆円】
(企業年金連合会) |
20.7% |
11.5% |
31% |
20% |
ヘッジファンド4.6%
REITゼロ (06年度数値) |
OECD諸国の公的年金運用の平均
(日本除く) |
50% |
36% |
不動産3%
その他11% |
カルパース 【25兆円】
(アメリカ最大の年金基金) |
26% |
40% |
20% |
REIT8%
ヘッジファンド系6% |
ABP オランダ【20兆円】
(ヨーロッパ最大の年金基金) |
44% |
34% |
REIT10%
ヘッジファンド系7.5% 他 |
ブリティッシュテレコム 【6兆円】
(イギリス最大の年金基金) |
24.3% |
36.9% |
31.6% |
REIT15.5%
(9%分借り入れ運用) |
アメリカの大学財団の平均
【資産規模1000億円以上の財団】 |
14.2% |
44.9% |
REIT4%
ヘッジファンド系31% |
ハーバード大学財団 |
13% |
31% |
ヘッジファンド系30% 他 |
それにしても、日本のGPIFの資産配分は、国民年金基金や厚生年金基金と比べても保守的すぎますね。これは厳密に言えば、保守的なのではなく、利回りが低すぎて買い手が少ない日本国債の受け皿にされているのです。日本が対GDP比2倍近いという世界最悪の借金大国になりえたのは、国民の年金運用という従順な借金の担い手がいたからです。
※追記;2014年よりGPIFは株式投資の割合を増やしています⇒日本の公的年金(国民&厚生年金)の運用資産割合
バブル後には景気対策だ何だといって、国債を刷って公共事業などに回されてきましたが、その原資の大半は国民の老後資金だったのです。国民に負担させず、国債の日銀引受をもっと大量に行えば、財源に困る事は無いですし、円の通貨価値の下落=円安へと誘導出来るので、輸出や観光産業が潤って万々歳となるのですが・・・。
皮肉なことに、我々が確定拠出年金で老後資産を運用する場合、日本国の年金運用はまさに「反面教師」にぴったりです。特に50歳未満の若い人達は、国債(国内債券)での運用など一切すべきではありません!そんなもので運用していたら、お金は増えません。国債はあくまで60歳以上の引退世代の人達が『逃げ切り』の為に使う手段です。
ヘッジファンドなど怪しいモノにまで投資するのはさすがにどうかと思いますが、少なくとも将来の年金破綻時代に対抗する為には、日本国債に投資はせず、株式・それも外貨建ての株式運用を中心に考えるべきなのです。
|