ヘッジファンドへの投資は必要か?
幾つかの投資本の中には、株や債券やREIT以外にも、オルタナティブ投資としてヘッジファンドへも投資することを推奨していたりします。確かに、世界のヘッジファンドの資産残高は増え続けており、魅力的に映ります。また、異なる金融商品へ分散した方がリスクが下げられますし、ヘッジファンドの平均リターンは市場平均を上回るという統計もあります。しかし個人が投資するには、色々な問題点が存在します。
まず、ヘッジファンドは「成功報酬」があるために通常の投資信託よりも高コストです。また、投資手法などは非公開であることが多いので、どんな手法で投資しているのかも分かりません。そもそも公開されたとしても、一般の投信と違い「空売り」と絡めた裁定取引を行ったり、先物やオプションを使ったり等、素人には理解できないでしょう。
「低コストのファンドに投資せよ」や「内容が理解できないものに投資するな」という投資の大原則に、ヘッジファンド投資は完全に相反するのです。
そして最大の問題点は、一般庶民が投資できるヘッジファンドにはロクなものが無いことです。彼らは本来、数少ない富裕層から大量の資金を預かって資産運用します。その方が顧客対応の手間、特に中途解約させない為の説得などが楽だからです。
つまり、小口投資家である一般庶民にまで門戸を開いているヘッジファンドは、富裕層から相手にされず、資金集めに苦労している劣等生達なのです。海外投資本の始祖である橘零氏の言葉を借りれば、一般向けのヘッジファンドというのは「地方のドサ回りをする売れない演歌歌手」のようなものなのです。
ヘッジファンドの平均リターンかさ上げ問題
アメリカには数多くのヘッジファンドに分散する「ファンドオブファンズ」の投信があったり、株式上場しているヘッジファンドがあったり、インデックス(平均リターン)も公表されていたりします。ところが、ヘッジファンドの平均リターンは実際よりもかさ上げされるという問題点があります。
成績が悪いヘッジファンドは、成功報酬で稼げないのですぐに解散される傾向にあります。ファンドマネージャー達は新規にファンドを設立して、失敗をリセットした状態で再出発する方が儲かるからです。こうして平均リターンは、生き残った優秀なファンドだけで算出され、解散した成績の悪いファンドは除外されるので、実体よりも過大評価された数値になるのです。ですからヘッジファンドの平均リターンが高いといっても、その数値はまやかしに過ぎず、橘氏いわく「統計詐欺」だということです。
ちなみに、運用資産約800億ドルという世界最大級のヘッジファンドである「ブラックストーン」や、世界で1.2を争う大富豪であるウォーレンバフェットの投資会社である「バークシャーハザウェイ」は、ニューヨーク証券取引所に上場しています。つまりこの両者は、一般人からも資金調達している訳ですが、出来損ないどころか世界で最も優秀なファンド達です。得体の知れないヘッジファンドに投資するなら、ブラックストーンやバークシャーハザウェイに投資する方が、はるかにマシだと思います。
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