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ニフティフィフティ〜70年代のアメリカ株式バブルの教訓

ニフティフィフティとは、1970年代前半のアメリカ株式市場で起きた、プチバブルを指します。直訳すると「素敵な50(銘柄)」となり、当時のアメリカの優良銘柄を集めた50銘柄に、投資家の人気が集まった現象のことです。

日本では、世界大恐慌(1929年)直前の株式バブルや、2000年前後のITバブルについては、認知が高く多くの検証がなされています。一方、70年代のニフティフィフティについては、知名度がゼロに近く、研究対象となった形跡が見受けられません。しかしニフティフィフティからは、株式投資の様々な教訓が得られる貴重な題材ですので、当ページで検証してみます。

まずはニフティフィフティの50企業の一覧表です(※注1)。年率利回り、PER、EPS成長率の各文字をクリックすると、50銘柄がそれぞれの項目で降順⇒昇順と入れ替わります。利回りとEPS成長率は、1972年末から2001年11月までの数値を年率換算したものです。またEPS成長率が「-99.9」となっている企業は、2001年までに経営破綻したことを表わしています。

企業名 ティッカー 年率利回り
(%)
1972年PER EPS成長率
(%)
フリップモリス MO 17.8 24.0 13.3
ファイザー PFE 17.4 28.4 12.9
ブリストル・マイヤーズ BMY 15.6 24.9 12.1
ペプシコ PEP 15.6 27.6 12.5
ゼネラルエレクトリック GE 15.4 23.4 11.6
メルク MRK 14.9 43.0 15.1
ヒューブライン HBL 14.8 29.4 12.4
スクイブ SQB 14.5 30.1 13.3
ジレット GS 14.1 24.3 11.6
アンバイザーブッシュ BUD 13.4 31.5 11.8
イーライリリー LLY 13.4 40.6 12.6
ジョンソン&ジョンソン JNJ 13.3 57.1 13.8
シェリングブラウ SGP 13.2 48.1 13.9
ファーストナショナリシティ FNC 13.2 20.5 10.4
コカコーラ KO 13.2 46.4 11.1
アメリカンホームプロダクツ AHP 13.1 36.7 10.8
アメリカンホスピタルサプライ AHS 12.2 48.1 11.2
P&G PG 11.9 29.8 9.5
テキサスインスツルメンツ TXN 11.8 39.5 11.5
AMP AMP 11.2 42.9 13.8
ダウケミカル DOW 11.2 24.1 5.1
チェスブローポンズ CBM 11.0 39.1 4.5
マクドナルド MCD 10.6 71.0 16.1
アップジョン UPJ 10.1 38.8 9.7
アメリカンエクスプレス AEXP 10.0 37.7 9.2
バクスター BAX 10.0 71.4 10.5
シュランバーガー SLB 9.9 45.6 6.4
3M MMM 9.7 39.0 7.5
IBM IBM 9.5 35.5 8.2
ウォルトディズニー DIS 8.9 71.2 5.8
インターナショナル・テレフォン&テレグラフ ITT 8.7 15.4 -99.9
ルブリゾル LZ 7.3 32.6 6.8
シアーズローバック S 6.8 29.2 0.5
シューリッツジョーブルーイング SLZ 6.8 39.6 -99.9
エイボンプロダクツ AVP 6.2 61.2 5.2
インターナショナル・フレーバーズ&フラグランシズ IFF 5.8 25.0 6.5
ハリバートン HAL 5.0 35.5 2.5
レブロン REV 4.8 69.1 -99.9
ルイジアナランド&エクスポロレーション LLX 4.7 26.6 2.3
JCペニー JCP 4.6 31.5 -99.9
ブラックアンドデッカー BDK 2.4 50.0 4.9
シンプリシティパターンズ SYP 2.3 43.5 9.0
イーストマンコダック EK 1.8 47.8 2.9
ディジタルイクイップメント DEC 1.1 56.2 10.1
ゼロックス XRX 0.2 45.8 -2.7
クレスゲ KM -0.7 49.5 -99.9
バローズ BGH -1.8 46.0 -0.6
エメリーエアーフライト EAF -2.3 55.3 -99.9
MGICインベストメント MGI -6.1 68.5 1.5
ポラロイド PRD -18.5 95.0 -99.9
50銘柄の単純平均 - 11.6% 41.9倍 10.14%
S&P500指数 SPX 12.1% 18.9倍 6.98%

ニフティフィフティの50銘柄のうち、その後約30年で最も高い利回りを記録したのは、フィリップモリスでした。煙草メーカーは80年代以降、健康被害から大量の訴訟を起こされ、多額の賠償金を支払うなど、猛烈な逆風を受けた産業です。しかしこの間も、フィリップモリス株は年率換算13%超のEPS成長率を記録しています。上記のようなマイナス要素が嫌われ、成長力の割に株価が割安であった(PERが低い)ことや、一度も減配をしなかったこと(※注2)が、最終的なリターンを高めた要因です。一方で、人気が高すぎた(PERが高い)銘柄の大半は、その後の利回りは残念な結果に終わっています。1972年時点のPER上位10銘柄のうち、S&P500指数を上回ったのはジョンソン&ジョンソン一社だけです(関連⇒低PER戦略の有効性)。

また、ニフティフィフティ銘柄への投資は、失敗に終わった訳ではありません。50銘柄に分散投資していれば、30年後のリターンはS&P500指数にわずか0.5%届かないだけでした。一方でEPS成長率は平均10%超と、S&P500指数より4割以上も高く、この50銘柄全体で言えば(倒産した企業も含めても)「素敵な銘柄」達であったのです。相場がピークを越えて割安になった73年以降に買っていれば、S&P500指数を上回れたのです。株式投資でバリュエーション(PER等の割安度)が如何に重要なのかがよく分かる例だといえますね。

EPS成長率とPERの割安さが、トータル利回りを高くする

もう一つ言えることは、時代の最先端を行くハイテク企業への投資が成功するとは限らず、むしろローテク産業の方が優秀なリターンを生む確率が高いことです。当時最先端のIT企業であったIBMの利回りは、S&P500指数を2%以上下回り、インスタントカメラで世界を変えたポラロイドは、2001年10月に経営破綻、株式は紙くずと化しました。

一方で、この期間に最もEPS成長率が高かったマクドナルドは、ご存じのようにハンバーガーを売るだけのローテク産業です。また、コカコーラやペプシコやジレットなど、ローテク産業で市場平均を大きく上回るリターンを上げた企業も少なくありません。ローテク産業は過剰人気になりにくい(バリュエーション的に割安)ので、平均を上回るEPS成長率を達成できれば、トータルの投資利回りは非常に大きくなるのです。マクドナルドにしても、当時のPERが70倍超と割高すぎた為だけであり、バブル崩壊後のまともなバリュエーション時に購入していれば、市場平均を大きく上回るリターンを上げられています。

最後に、ファイザーやメルクなど、ニフティフィフティのもう一つ勝ち組=医薬品業界について。確かにこの業界は、先進国の高齢化=医療費増大の恩恵を受けるでしょう。しかし一方で、各国政府の医療費削減⇒ジェネリック薬の普及という逆風もありますし、また画期的な医薬品の開発が極めて難しくなっている現状もあります。メルクやイーライリリーなどは、PERが高くともそれをはねのける高成長で、高い利回りを記録してきました。今後はこのように、成長力で割高な株価に対処できるとは考えにくいので、投資する際はやはりバリュエーションと照らし合わせて判断するのが重要です。

ニフティフィフティの教訓をまとめると、高い成長率の企業でも、まともなバリュエーション時に買うことが重要だということ。もう一つは、時代の最先端を行く企業でなくとも、市場平均を上回る成長は可能だということです。

 

※注1:ソースはジェレミーシーゲル著「株式投資(日経PB)」の158ページより。 
※注2:株価が長期間低迷して、その間も減配されなければ、配当金の再投資で保有株数が増えるので、株価が回復すればリターンは極めて大きくなる。シーゲルはこれを「配当のアクセル」と呼んでいる。

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