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リーマンショックの嘘

サブプライム問題に発端する金融危機は、2008年9月に一層深刻なものとなりました。世間一般、特に日本のマスコミは、その原因は9月15日に破綻した「リーマンブラザーズ証券」だとし、今回の金融危機を「リーマンショック」と名付けました。マスコミがリーマンショックと連呼するために、日本では金融危機=リーマンショックだという認識が広がりました。

しかし、これは完全に間違った考え方です。金融危機への影響力として、リーマンブラザーズの破綻などは小さいもので、もっと大きな要因があったのです。

金融危機の第一の原因は、リーマン破綻の翌日(9月16日)に保険大手のAIG社が経営危機に陥り、公的管理下におかれたことです。AIGは「CDS(クレジットデフォルトスワップ)」という、企業の倒産保険を大量に扱っており、AIGの経営が不安定になったことで、保険金が支払われなくなる恐れが出たのです。マーケットはこれを恐れ、株式などリスク資産を一気に売却したので、株の暴落が始まったのです。

そして金融危機の第二の原因であり、最大の致命傷となったのが、9月29日にアメリカの下院で金融安定化法案が否決されたことです。金融安定化法案は、経営が不安定になった大手金融機関に公的資金を注入するなど、サブプライムの原因を作った張本人達を助けるような内容でした。しかし、日本を始め世界の金融危機の事例から、公的資金の注入なくしては金融の回復は望めないことは明白でした。国民の反対が強くとも、議員達は金融安定化法案に賛成せざるを得ないと見られていました。

しかしアメリカの下院で、金融安定化法案はまさかの否決となりました。これは市場の誰もが予測していなかったことで、まさに青天の霹靂でした。このままではシティバンクなど大手金融機関の破綻が現実になるとして、市場ではパニック売りが加速しました。その衝撃の大きさは、ニューヨークダウが777ドル安という、史上最大の下げ額を記録したことからも明らかです。

AIGショック・米下院ショックと言うべきでは?

一方で、リーマンブラザーズが破綻したからといって、実体経済への影響はほとんどありません。リーマンはAIGのように、多額の倒産保険を扱っているわけではありませんでした。また、シティバンクやバンクオブアメリカのように一般の銀行業務を行って、国民や企業などに密接に関わっている訳でもありません。リーマンは「投資銀行(サブプライムローンなど無茶な金融商品を作るのが主業)」ですから、サブプライム危機を作り出した元凶ともいえる会社でした。いわば、行きすぎた金融至上主義の代表格なので、潰れて無くなった方が世界経済にとって良かったといっても過言ではありません。

以上のように、リーマンブラザーズの破綻はむしろ金融市場にとって健全化に繋がる有益なことでした。2008年9月の金融危機は、AIG破綻と金融安定化法案の否決こそが原因であり、命名するなら「AIGショック」や「アメリカ下院ショック」とでも言うべきなのです。

別の証拠も1つ紹介します。危機から2年が過ぎた2010年11月現在、Googleで「"リーマンショック"」と検索すれば200万件以上がヒットします。しかし英語で「"lehman shock"」と検索(※注)しても28500件しかヒットしません。つまり英語圏ではリーマンショックなんて言葉はほとんど使われておらず、日本だけしか使っていない言葉であることが分かります。

別にネーミングなんてどうでもいいだろ?というのも事実ではありますが、筆者が言いたいのは、金融に対してマスコミは無知であり、彼らの扇動に乗ってはいけないと言うことです。マスコミは、時には大衆受けすることだけを考えて、また時には自分たちの都合の良い風に事実をねじ曲げて報道することがあります。「リーマンショック」というネーミングも、おそらくその方が大衆受けが良いからそう名付けたのでしょう。リーマンの看板を記念に持って帰るTシャツ・半パンの社員・・・あれは未来永劫使い回せる映像ネタですし、いかにもワイドショー的で大衆受けしやすいですから。

今回の金融危機を受けて「株は危ない」だの「ドルが暴落する」だの、マスコミは大衆受けだけを考えた報道を続けていますが、彼らの扇動に乗ってはいけません。事実をしっかり認識し、正しい判断をしないと、資産運用で大損させられますよ。

 

※注;検索時には""(ダブルクォーテーション)で囲みます。でないとlehmanとshockを別々に書いている、つまり金融危機と関係ないページまでヒットするからです。もっとも""で囲まず検索しても80万件足らずと、日本語の「リーマンショック」よりも遙かに少ないのですが・・・。

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