プライベートバンクは必要か?
プライベートバンクとは、スイスで生まれたとされる、富裕層の資産を預かって運用する金融機関のこと。通常の銀行と違うのは、秘密主義が徹底されていること、資産運用や節税などの細かいサービスが行き届いていること、通常の金融機関では投資できない商品(貴金属や特定の不動産や外国株など)にもアクセスできることなどです。
近年、個人向けのプライベートバンクが営業活動を熱心にしているようです。最低でも10億円がボーダーラインと言われていたのが、数千万円単位でも引き受ける所も出始めたようです。果たして我々投資家が活用する価値はあるのでしょうか?
かつてはプライベートバンクでしか扱っていなかった世界各国への分散投資は、今やネット証券で誰でも手軽に出来る環境が整いました。東京やニューヨークの一等地の建物も、REITファンドを使えばわずか数万円単位から投資できるようになりました。もはやプライベートバンクでしか投資できない商品は、ほとんど存在しなくなりました。
しかもプライベートバンクは高額な手数料を取りますので、少し高い利回りを得られた位では手数料で消えてしまうことでしょう。一般庶民がプライベートバンクを活用するメリットは、何も見当たらないのが現実です。
富裕層にとってはメリット・利用価値はあるかも?
ここで語弊を招かないよう言っておきますが、プライベートバンク自体が無意味な存在だと言うわけではありません。大富豪だけを相手にしてきたヨーロッパの伝統的なプライベートバンクには、それ相応にメリットはあります。例えば、彼らは扱う資産が巨大な故に、証券会社とは蜜月な関係にあります。一度に多額の投資を行ってくれる富裕層は証券会社にとっては「上客」ですから、彼らに対してはIPO(新規公開株)を優先的に割り当てるなどの特別なサービスが行われます。
また伝統的プライベートバンクを利用するのは富裕層・大富豪ばかりですが、彼らはすべからく自らビジネスを行う実業家・事業主です(サラリーマン大富豪などありえない)。プライベートバンクを通じて、他の実業家と知り合いになるチャンスもあるので、人脈が広がったりビジネスの拡大などが見込めます。つまりプライベートバンカーは一種の「社交場」でもあるわけです。
このように、大富豪だけを対象にする伝統的なプライベートバンクは、高いコストに見合う価値や必要性が無いわけではありません。しかしこのような「本物の」プライベートバンクは、少額の資産しか持たない一般庶民を相手にすることは絶対にありません。富裕層であろうと庶民であろうと、一人の顧客を抱えることによるコストは大差ありません。ですから、同じ資金を集めるにしても、なるべく少数の大富豪から大量に集めた方が効率的です。
つまり、数億円単位の資金を持つ富裕層ではなく、せいぜい数千万円止まりである一般庶民までをも相手にするプライベートバンクというのは、大富豪には相手にされない「負け組」だといえます。この辺は、一般人向けに開かれているヘッジファンドにはロクなものがないのと同じ理屈です。⇒ヘッジファンド投資は必要か?
貴方が数億円以上の資産を持つ富裕層ならいざ知らず、一般のサラリーマン世帯であるなら、プライベートバンクなど不要だと考えて間違いないでしょう。
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