9月や10月に株価が暴落しやすい理由
株式市場には、季節による様々なアノマリー(法則)があります。その中でも、9月や10月に株価が暴落しやすいというアノマリーは強力です。
例えば、日米ともに1日の株価下落率が最大だったブラックマンデーは1987年の10月19日に起きましたし、記憶に新しいリーマンショックは2008年9月15日で、恐怖指数(VIX指数)が史上最大に跳ね上がったのが同年10月24日でした。世界大恐慌の引き金となったのは1929年10月24日の株価大暴落(暗黒の木曜日)でしたし、2001年には9.11テロによりアメリカでは株式市場が閉鎖⇒暴落する事態に陥りました。ロシアがデフォルトして世界最大のヘッジファンドLTCMが破綻したのも、1998年の10月(2日で20円の円高が起きた⇒ドル円の一日の変動幅)でした。
そして極めつけの法則として、9月は世界中の株式市場で唯一、月間損益がマイナスになる月だという統計があります。ジェレミー・シーゲル著「株式投資」によると、世界の先進20ヶ国(1970〜2006年の期間)の月間平均損益が、すべての国で9月は下落だったというのです。36年もの長期平均で、しかも20カ国全ての統計がマイナスなのだから、これはアノマリーやオカルトで片づけられる話ではなく、明確な理由があっての値動きでしょう。
9月や10月に起きた大暴落や世界的大事件一覧 |
1929年10月24日 |
世界大恐慌(暗黒の木曜日) |
1973年10月 |
第一次オイルショック |
1985年9月 |
プラザ合意 |
1987年10月19日 |
ブラックマンデー |
1992年9月 |
英国がユーロ断念(中央銀行がヘッジファンドに敗北) |
1998年10月 |
ロシアデフォルト〜最大のヘッジファンド破綻 |
2001年9月11日 |
9.11同時多発テロ |
2008年9月15日 |
リーマンショック |
9月から10月にかけて、世界中で株価が暴落しやすい事には、幾つかの明確な理由が考えられます。中でも最も大きな理由といえるのが、欧米のヘッジファンドの多くが11月に決算月になっていることです。ヘッジファンドでは、決算時のポートフォリオがマイナスの銘柄だらけでは、大富豪の顧客に逃げられてしまいます。ゆえに決算前にポートフォリオを「化粧直し」するのが、ヘッジファンドの癖だといいます。ですから、9月あたりで年初来マイナスになっている銘柄は特に売却されやすく、市場では「元々悪かった銘柄が更に暴落する」という現象が起きやすい理由となっています。
逆に12月は株価が上昇しやすい統計がある
またアメリカでは年末前になると、個人投資家が損益通算を行うための節税売りを行う時期になります。ですから9月の相場が軟調であれば、10月や11月に個人投資家が利益が出ている銘柄でも、損失と相殺しようと売りに出されるケースが増えます。こうした個人投資家の動きも、相場の崩壊に拍車をかける原因だと考えられます。よって、統計的に9月時点で年初来(1月〜8月)の株価(特にNYダウ平均株価)がマイナスの年は、9月や10月に一方的な売り相場となり、大暴落が起きる可能性が高くなるのです。
そしてアメリカの株式市場が暴落すれば、世界中の株式市場へ「負の連鎖」が広まります。日経平均も例外ではありません。日本市場の売買の半分以上が外国人投資家となっているので、本来ガラパゴス市場であるはずの日経平均株価も、世界の軟調相場の影響を必ず受けてしまうのです。
逆に12月や1月は、株価がプラスになりやすいという統計があります。株価上昇率が最も高い月は、日本(日経平均株価)でもアメリカ(NYダウ・S&P500指数共に)でも、年末の12月です。この理由も様々なことが語られていますが、9〜11月に株価が暴落することが多いので、その反動(リターンリバーサル)で年末高になるのだと考えるのが最も自然でしょう。
ちなみに第一次オイルショックが起きたのは1973年の10月で、プラザ合意(世界的ドル売り協調介入)が決まったのは1985年の9月、イギリスがユーロ参加を断念した(ジョージ・ソロスのポンド売り投機にイングランド銀行が屈した)のも1992年の9月でした。単発の暴落ではありませんが、その後の世界の金融市場に大きな影響を与える大事件も、原因不明ですが何故か9月や10月に起きる可能性が高いです。
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