世界の国別自動車販売台数と対人口比からの成長余地
新興国の経済成長で、最も恩恵を受ける産業の一つは、自動車業界でしょう。欧米や日本などの先進国に比べ、自動車の普及率が10分の1以下である国もざらなので、今後の成長余地は極めて大きいです。まずは世界の主要国の国別自動車販売台数と、対人口比を出してみました。
国名 |
人口(07年) |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
4年間平均 |
対人口比 |
アメリカ |
30583 |
1744 |
1705 |
1644 |
1349 |
1611 |
5.27% |
カナダ |
3288 |
163 |
167 |
169 |
167 |
167 |
5.06% |
イギリス |
6085 |
283 |
273 |
280 |
248 |
271 |
4.45% |
フランス |
6165 |
255 |
250 |
268 |
257 |
258 |
4.18% |
ドイツ |
8260 |
361 |
377 |
348 |
343 |
357 |
4.33% |
イタリア |
5888 |
250 |
260 |
277 |
243 |
258 |
4.37% |
スペイン |
4428 |
196 |
195 |
194 |
136 |
180 |
4.07% |
ブラジル |
19179 |
171 |
193 |
246 |
282 |
223 |
1.16% |
ロシア |
14250 |
135 |
225 |
289 |
330 |
245 |
1.72% |
インド |
116902 |
144 |
175 |
199 |
198 |
179 |
0.15% |
中国 |
133632 |
577 |
722 |
879 |
938 |
779 |
0.58% |
南アフリカ |
4858 |
56 |
65 |
67 |
49 |
59 |
1.22% |
メキシコ |
10654 |
113 |
114 |
110 |
103 |
110 |
1.03% |
韓国 |
4822 |
114 |
116 |
122 |
115 |
117 |
2.42% |
豪州 |
2074 |
99 |
96 |
105 |
101 |
100 |
4.83% |
日本 |
12797 |
585 |
574 |
535 |
508 |
551 |
4.30% |
※単位は万人および万台。対人口比は、4年間平均販売台数÷人口(2007年度)。参照データは日本自動車工業会より。
中国とインドの成長余地は莫大だが
データからは、先進国では概ね、年間の自動車販売台数は対人口比4〜5%程度であることが分かります。国土の広いアメリカ・カナダやオーストラリアは多めで、日本やヨーロッパなど国土の狭い国はやや少なめです。
一方で新興国では、年間の販売台数は対人口比で1%前後に留まっています。これは、各国の国民一人当たりの所得に比例しています。BRICsの中でも一人当たりGDP(≒所得)がダントツで低いインドでは、対人口比では先進国のおよそ30分の1、1年間に自動車を買う人は1000人に1〜2人と圧倒的に少ないです。一方で「新興国以上、先進国未満」という微妙な立場の韓国では、先進国の約半分位の比率です。
グラフにしてみると、先進国と新興国の差はより鮮明になります(赤の折れ線が対人口比)。

逆に言えば、それだけ新興国での自動車産業の成長余地があるということです。特に人口が圧倒的に多く、また国土自体も広い中国とインドは、自動車業界にとってはアメリカに代わり最重要マーケットとなることでしょう。
一方で先進国では、人口も自動車普及率も既に飽和状態で、今後のマーケット拡大余地はほとんどありません。既に日本では、バブル景気がピークの1990年(777万台)から、減少に歯止めが掛かっていません。
2009年には中国の自動車販売台数は1360万台となり、金融危機で落ち込んだアメリカ(1040万台)を抜いて世界一になりました。これでもまだ、対人口比で約1%に過ぎません。中国がアメリカ並みになれば、年間の自動車販売台数は6500万台と、2008年の世界全体での販売台数(約6300万台)を一国で抜くほどにまで成長します。そこまでは無理でしょうが、それでも例えば韓国並みの普及率になれば、販売台数は3000万台以上にのぼります。
このように新興国でのマーケット拡大が、先進国の減少を上回ることが期待できるので、自動車業界の前途は明るいと見れますが、逆風となる事象もあります。自動車の耐久性など、性能は年々飛躍的に進歩しているので、買い換え需要は今後低くなる恐れもあります。自動車に限りませんが、各社が切磋琢磨して耐久性が上がるほど、買い換え減少で売上は減るという「トレードオフ」のジレンマにさらされるのです。日本で販売台数が減少し続けているのは、国民所得が減少していることだけでなく、耐久性の向上による買い換えサイクルの長期化も大きな要因です。
また今後はガソリン車に代わり、電気自動車が普及していくことが予測されます。電気自動車は、現在のガソリン車に比べて仕組みが簡単なので、新規参入の障壁が大きく下がります(※1)。実際に中国の内陸部では、世界では知名度ゼロの名もないメーカーの電気自動車が、実際に普及し始めているようです。トヨタやフォルクスワーゲンなど既存の勝ち組メーカーは、今後は無数の名も無きメーカーとも競争しなければいけなくなるのです。 ※1:電気自動車は内燃機関(エンジン)が不要な為、製造が簡単。構造面は、極論すれば電池で動くミニカーを巨大化するだけである。
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