アリペイ【支付宝】=アント社の新規上場(IPO)情報
アリペイ「支付宝(Alipay)」とは、中国のネット通販の大手=アリババグループ(BABA)が行う、スマホを使ったプリペイド決済システムの事です。厳密には、アリババの関連会社=アント社のサービスです。このアリペイ=アント社(※注)が上場するのでは?という観測があります。上場すれば、時価総額は1000億ドル規模になるとも予想されています。
※注;正式名称=アント・フィナンシャルサービスグループ。アリババの創業者=ジャック・マー氏が「アリペイこそが最大の稼ぎ頭になる」と読み、投資ファンドの影響力を排除する目的で、アリババから分社化したと言われています。現在もジャックー・マーが筆頭株主。
当稿執筆時(2017年8月)はまだアリペイのIPOは決定していませんが、いずれ上場することはほぼ確実なので、関連する情報をまとめておきます。新たな情報が入り次第、更新予定です。

■アリペイの普及度合い
アリペイは元々、中国のネット通販の決済手段として誕生しましたが、今では電気・ガスなどの公共料金支払い、航空チケットやタクシー料金の支払い、など日常生活の多くのサービスで利用できるようになっています。アリペイは企業側の導入コストがクレジットカードなどと比べて圧倒的に安く、手続きも簡易なので、屋台などの個人商店レベルでも導入できる事が、爆発的普及の要因です。
2016年時点で、アリペイの月間ユーザー数は約5億人、決済額は約1.7兆ドル(190兆円)と、もはや社会インフラと言えるレベルまで普及しています。日本人の感覚では信じられないでしょうが、中国では既にアリペイなどのスマホ決済が広がり、日本以上にキャッシュレス社会化しているのです。
■競合する企業(ライバル)
アリペイは銀行口座と連動して支払う形式なので、クレジットカードのような信用支払いではなく、形式としてはデビットカードに近い存在です。従ってライバルは、中国最大のプリペイド決済システム=銀聯カードや、中国のSNS最大手=テンセント社の「テンペイ(微信支付(WeChat Pay))」となります。
中国の3大決済システム比較表 |
|
アリペイ |
テンペイ |
銀聯カード |
正式名称 |
支付宝(Alipay) |
微信支付(WeChat Pay) |
銀聯(Union Pay) |
決済方法 |
銀行連動のスマホ決済
(疑似デビットカード) |
銀行連動のスマホ決済
(疑似デビットカード) |
クレジットカード
デビットカード |
運営母体 |
アント・フィナンシャル
(親会社アリババは上場済み) |
テンセント
(上場済み) |
中国系銀行の合同運営 |
推計決済金額 |
8兆ドル(2015年) |
1.7兆ドル(2016年) |
1.2兆ドル(2016年) |
利用可能国数 |
28ヶ国 |
15ヶ国 |
162ヶ国 |
※情報ソース;SBI証券、DIGIDAY[日本版]、など
銀聯(ぎんれん)カードは、中国発のクレジットカードブランドとして日本でもお馴染みです。2015年には全世界での決済金額が約8兆ドルに達し、VISAを抜いて世界最大の国際カードブランドとなりました。決済額の大半がクレジットではなくデビットカード形式なので、アリペイともモロに競合関係になると言えます。
テンセントはSNS「ウィーチャット」を運営し、月間ユーザー数9.6億人と、アメリカのフェイスブックや日本のLINE等に匹敵する、圧倒的な寡占状態にあるサービスを持ちます。現状ではアリペイの方が普及は進んでいますが、テンペイがその圧倒的なユーザー数を武器にアリペイに追いついてくる可能性もありえます。
■アリペイの将来性
一方、世界で圧倒的シェアを占めるクレジットカードのVISAは、規制により中国市場では展開できていません。アリペイや銀聯カードが中国国内で普及した理由の一つは、規制によりVISAなどの外資が参入できなかった事です。もう中国国内では、アリペイや銀聯カードが完全に市場を抑えているうえ、中国ではクレジットカードで必須の「信用情報」の普及・管理が不十分なので、仮に規制緩和されても、VISAなどのクレジットカードが中国で大きなシェアを奪える可能性はほぼありません。
日本でも、激増する中国からの観光客目当てに、家電大手のビックカメラや、コンビニ大手のローソンなど、アリペイでの決済に対応する企業も増えています。銀聯カード同様、世界中で更に利用が拡大していく事が確実なので、上場すれば人気が殺到して株価が暴騰する可能性が高いでしょう。
しかしアリペイの場合、時価総額が巨額(≒発行済株式数が多い)ので、日本でジャスダックの小型企業がIPOする時のように、PERが数百倍規模になるバブル上場になるとは考えにくいです。
ちなみに親会社=アリババが2014年9月に上場した時も、株価は高騰して初値のPERは60倍ほどでした。フェイスブックやLINEもそうでしたが、人気間違いなしと言われるIT企業の上場時、PERは50倍から100倍の間くらいになる事が多いです。将来性はほぼ間違いない企業なので、あとはどれだけ安く購入できるかが、投資する際のポイントです。
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