ノバルティスの売上高と事業戦略
ノバルティス(Novartis International AG)は、スイスに本社を置く、医薬品製造企業です。売上高は600億ドル近くあり、世界の製薬メーカーでも5指に入る巨大企業で、スイスのSMI指数の構成銘柄です。日本市場にも参入しており、子会社であるノバルティス・ファーマー株式会社が営業を行っています。
ノバルティスは1996年、新薬メーカーであったチバガイギー社と、ジェネリック薬メーカーであったサンド社が合併して誕生しました。現在でも、同社の最大の稼ぎ頭は新薬事業(営業利益の3/4を稼ぐ。右下グラフ)ですが、後述する理由などから、ジェネリック部門を持つ事のメリットも大きいです。
現在、世界の製薬業界は、年々新薬の開発が困難な状況に陥っています。ゆえに、研究開発費が増加しており、それを補う戦略が求められています。ファイザーを筆頭に、世界のメガファーマーがM&A(買収や合併)を繰り返しているのは、スケールメリットで研究開発コストを吸収することが、主な目的です。ノバルティスも近年、以下のような合併・買収を行っています。
一方で、新薬とは対照的に追い風が吹いているのが、ジェネリック(後発医薬品)業界です。日本に限らず、先進国はアメリカも欧州諸国も、高齢化に伴う医療コストの増大が深刻化しており、その解決策の一つとして、薬価の安いジェネリックの普及が進められています。
しかし、大半のメガファーマーはジェネリック市場への参入をためらっています。売上高世界最大のファイザーも、また同じスイスにありライバル関係のロシュも、ジェネリックには未参入です。薬価の高い新薬事業が収益源ゆえに、ジェネリック薬を生産すれば、自ら首を絞めることに繋がるからです。
ところがノバルティスの場合、元々が巨大ジェネリックメーカーであったサンドとの合併で生まれた企業ですから、他のメガファーマーのようなジレンマはありません。またジェネリックは、薬価が安いゆえに生産コストを抑える必要があるので、元からノウハウや製造ラインを持つノバルティス(サンド)は有利です。
同社は他にも、ワクチンやOTC(処方箋が不要な一般医薬品)にも事業ポートフォリオを広げる、多角化戦略を行っています。ファイザーが売上の9割を新薬(医療用医薬品)に頼っているのとは、極めて対照的です。最終的にどちらの戦略が勝者となるかは分かりませんが、多角化戦略のノバルティスの方が、より経営が安定していることは確実です。
ノバルティスは、本国スイス以外にも、アメリカにもADRで重複上場しており、日本では楽天証券で同社株を購入できます。
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