ヒューレット・パッカードの売上高と事業戦略
ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard Company)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに本社を置く、コンピューター及び情報技術関連の企業です。略称である「HP(エイチピー)」という呼称でも知られており、日本でもノートパソコンやプリンタのメーカーとして有名です。2011年度のパソコン出荷台数は、世界シェア1位(約18%)を誇ります。
2011年度の売上高は1272億ドルにのぼります。PCやプリンタ、サーバーやストレージ、ネットワーク機器、ソフトウエア等と、非常に広範な製品ポートフォリオを抱え、世界170ヶ国以上の国で10億人以上の顧客に製品を提供しています。しかしながら、同社の看板であるパソコン事業は、売上高に占める比率こそ最大ですが、世界的な競争激化で利益率が低下しており、現在では成長を阻害する原因ともなっています。
ヒューレット・パッカードは2011年9月、元イーベイ社CEOであったメグ・ホイットマン氏を、新CEOとして迎えました。一部ではパソコン事業からの撤退も噂されていましたが、ホイットマンCEOは事業継続する意思を示しました。その理由は、PC事業が消費者との接点を持つ、重要なビジネスだからと述べています。
その一方で、2011年10月には、企業向けインフラソフトメーカーであるオートノミー(Autonomy) 社を買収しました。これは、急激に成長するEIM(エンタープライズ・インフォメーション・マネジメント)市場への注力を加速する戦略です。EIMとは、企業が抱える様々な異種システム製のデータを統合し、業務の効率化を図る、総合的なサービスのことです。近年流行の「クラウドビジネス」も、EIMの一種です。IBMなど、近年のシステムインテグレーター企業では、EIMは高収益を上げる部門として最重要視されています。
ヒューレット・パッカード社も、利益率の低いパソコンやプリンタ事業はあくまで企業広告と位置付け、EIMに代表される高付加価値・高利益率の分野に、経営資源を集中することを進めています。特に、売上規模の大きい大企業や公共・政府機関向けビジネスにおいて、EIMやクラウドソリューションなどで、優位なシェアを築くことを大きな目標にしています。
地域別の売上高比率を見ると、アメリカ国内が35%、EMEA諸国(ヨーロッパ、中東、アフリカ)37%に対し、アジア・パシフィックでは19%と規模が小さいです。今後は、IT分野でも世界最大のマーケットとなる中国やインドなど、アジアの新興国でシェアを築けるかという点も、同社の課題となるでしょう。
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