ヤム・ブランズの売上高と世界戦略
ヤム・ブランズ (Yum! Brands, Inc.) は、アメリカケンタッキー州ルイビルに本社を置く、ファストフードレストラン企業です。ケンタッキーフライドチキン、ピザハット、タコベルといったファストフード店を全世界で展開しています。2011年度の売上高は126億ドル、マクドナルドに次ぐ世界第二位の外食チェーンです。
同社は1997年に、飲料大手のペプシコ社から分離独立して設立されたトライコン・グローバル・レストラン社 (Tricon Global Restaurants, Inc.)が前身です。2002年にヤム・ブランズへと社名変更しました。
ヤム・ブランズは世界115ヶ国に店舗展開しています。業態別の店舗数は、ケンタッキーが約17,000店舗、ピザハットが約13,000店舗、タコベルが約6,000店舗となっています。店舗数ではアメリカ国内が最も多いですが、地域別の売上高で比較すると、中国が最大の市場となっています。
2011年のIR情報(アニュアルレポート等)には、中国やインドといった成長市場への積極展開が、大きくアピールされています。現状でも、そうした新興国市場において、最大のライバルであるマクドナルドを大きく引き離す出店数を誇っていますが、さらなる成長可能性を見込んでいます。
具体的には、人口100万人あたりの店舗数がアメリカでは60店舗であるのに対して、中国やインド等ではまだ1.7店舗であり、出店の余地が大きいと述べています。現在(2011年度)は、そうした新興国市場には約6,600店舗が展開されていますが、2020年度には15,000店舗にまで増やすことを目標に挙げています。
2011年には、中国最大手の外食チェーンであった小肥羊(リトルシープ)を買収(※注1)するなど、非常に積極的な拡大路線を推し進めています。 一方で、ロング・ジョン・シルバーズ(Long John Silver's)やA&Wレストランといった外食チェーンも保有していましたが、2011年に売却しています。今後は、ケンタッキーなどの主力3ブランドと、小肥羊のように高成長を望める新興国市場のブランドに、経営資源を集中していくとのことです。
最後に注意点も。ヤム・ブランズ社は、中国等での成長性から、投資家から非常に高い期待を寄せられており、PERやPBRが常に割高水準な傾向です。特に、借入金(負債)の比率が高く、経営に過度なレバレッジが掛かっている事には留意すべきでしょう(※注2)。
※注1:小肥羊(リトルシープ)の全株を買い取ったので、完全子会社化されました。
※注2:投稿執筆時(2011年5月)、ヤム・ブランズのPERは22.5倍、PBRは何と15.5倍にも達しています。
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